2chとか、炎上とか、そこらへんの話に関する一考察

 最近になって少しだけ考えることなんだけど、幼女誘拐や犯罪予告といったネガティブな側面でもって2ちゃんねるがマスコミによって語られたことと、2ちゃんねる内外での、DQNの犯罪行為をあげつらってまつりあげる、炎上行為って言うのは、表裏一体でセットのものなんじゃないかなって思うんです。時系列で見ても、ネガティブな側面で2ちゃんが語られたあとに2ちゃんで炎上だ祭りだっていわれだしたような気がする*1。この順序こそが今の2ちゃんを構成する重要な要素となっているのではなかろうかと思うわけです。
 2ちゃんねるがネガティブな言説で持って語られるようになったのは2000年の西鉄バスジャック事件からじゃないでしょうか。少しだけ前の記事になりますが引用です。

2000年5月3日、「ネオむぎ茶」と名乗る17歳の少年が、2ちゃんねるに奇妙な警告メッセージを書き込んだ。西日本鉄道(西鉄)の高速バスをバスジャックし、乗客1人を殺傷する1時間前のことだった。「ネオむぎ茶」の警告を以前無視していた2ちゃんねるの常連たちは、ただならぬ文面を見て、真剣に注意を向けるようになった。警察も同様だった。2001年には、「ネオ麦酒」と名乗る模倣犯が札幌YOSAKOIソーラン祭り爆破予告2ちゃんねるに書き込み、逮捕された。

 この事件を境にして人々はネットに2ちゃんねるというカオスな掲示板の存在を認識したことでしょう。
 俺は2000年当時といえばまだ中学2年生で、携帯も持ってないし、パソコンも家にないし、なんか知らんけどネットって怖いな、という印象を受けたことをうっすらですが覚えています。だからその当時から2ちゃんねるに深く関わっていたわけではもちろんない*2ので実際どうだったかまでは知らないのでなんとも言えないんですが、それ以来大手の報道ではネット、殊に2ちゃんねるを落伍者の巣窟としてみなすようになり、2ちゃんねるの社会的な立場は苦しくなっていく一方だったんじゃないのかなと思います。
 で、この世間的な流れにももちろん2ちゃんねら*3は敏感なわけで。マスコミ電通やらの大手メディアにたてつくようになったのもこの事件がひとつのきっかけだったのかもしれません。ネガティブな側面ばかり取り上げるのはどうなのよ、というある種の不信感からきたものなんだと思います。
 そして、その流れと同時に、もうひとつ重要な流れが徐々にですが生まれてきていた。それは2ちゃん内部での自浄作用であり、2ちゃんねら自身による2ちゃんねるの潔白証明であり、ようは2ちゃんねらが自重しだしたわけです。今までならほっとかれてきたちょっとおかしい書き込みも当局に情報提供しだしたりとか、少しだけですがコンプライアンスを守り始めたわけです。2ちゃんねるに正義とか道徳規範が芽生えたのも、例の事件がきっかけであり、そこにはこれ以上犯罪者を出すと厄介なことになるというやんわりとした危機感も存在していたんじゃないのかな、とも思います。
 で、です。いわばそれが過剰な形で可視化されつつある、あるいはその2ちゃんねらの正義を外に振りかざすようになってきた結果というものが、炎上の多発なのではないでしょうか。
 炎上にもさまざまな矛先、対象があって一概に言えないのは確かなんですが、ここで僕が注目するのは、DQNによる当て逃げ事件やらmixiの犯罪自慢等の、つまりは2ちゃん「外」のちょっとイカれた個人に対するバッシングです。
 これは2ちゃん内部で起こっていた自浄作用が、2ちゃん外に表れたものなんじゃないのかなと思うんです。2ちゃんねるの中にいるおかしな発言をする人を摘発して自分たちの正義を示すよりも、「2ちゃんの外にだってこんなに悪いことをしている人がいっぱいいるじゃないか」ということを暴くことによって自分たちの位置を相対的に正当化していく方向にシフトしてきたわけです。そっちのほうがより外に向けてメッセージ性があるから。*42ちゃんの中でごたごたするよりも他の場所、2ちゃん外部の人物を貶める方がニュースになるし、自分たちの正義を外部に向けて見せ付けやすいのだと思います。彼らは半分ネタでやっているのかもしれませんが、さらに一歩踏み込んだ心理にはこういうものが隠されているような気がしてなりません。
 誰が言い出したか知りませんが「おまえらだけは敵に回したくない」というのは的を射てると思うし、そんな言葉が生まれたのもある意味必然なのかもしれません。こんな言葉初期の2ちゃんねるには当てはまらないはずです。といっても、繰り返しになりますが俺は初期の2ちゃんねるを知らないのでなんともいえませんがね。
 そういう2ちゃんねらの自浄作用は、一方ではネット空間の中に、相互に監視しあい、ボロを出すことを極端に恐れるぎすぎすした雰囲気を生み出したと言え、これを不快に思う人もいることだと思います。俺もあまりいい事ではないとは思います。
 しかしこの自浄作用は逆に、2ちゃんねるにとってはプラスに働いたんじゃないでしょうか。最近2ちゃんねる関連の犯罪に絡んだネガティブな言説をあまり耳にしなくなったような気がします。*5気がするだけなのかもしれませんが。反対に、2ちゃんねるから新たな流行語が生まれたり、書籍化されたりといったポジティブ*6な影響もリアルに及ぼしつつあります。で、このポジティブな2ちゃんカルチャーをリアルに振りまく上で、その流れを加速させたひとつの要因がニコニコなんじゃないかなと俺は思うし、実際、自分がなぜ2ちゃんねる的な世界にわずかながらコミットしだしたかという経緯がまさにニコニコ動画経由だったわけなのですが、続きはまた書くことにします。
 大体こういう内容が僕の今の個人研究の骨の部分です。骨ではないか。一部分か。
 

*1:だけですが

*2:今もそんなに深くは関わっていませんけどね

*3:といっても2ちゃんねるは一枚岩には語ることができないので一番コアな部分の2ちゃんねら、という意味で。以下も同じ

*4:そういう意味では突発オフとかも同じ範疇かな

*5:かといってポジティブでもないんだけどね。2ちゃんの炎上の「功績」は大概「インターネット上で」見たいな言い方で紹介されるし。

*6:犯罪めいたやましい事ではないと言う意味で