リアル世界に逆流する2.0経済〜無料提供ビジネスと「行動連動型広告」〜

 おとといゼミでマーケティングの授業を受けて、面白かったので、そっちの話も若干絡めつつ。。。 
 リアル世界で、消費者に商品を無料で提供する代わりに、広告をつけたり、マーケティングデータを集めたりするサービスがにわかに面白くなってきている気がする。

  • サンプル・ラボ。僕もさり気にテレビを見てて、オビラジRという、オリエンタルラジオ司会の普通の深夜番組でさっき知りました。サンプル・ラボは東京の神宮前にオープンする店です。でも、ただの店ではありません。タダの店です。*1この店には企業のサンプルがずらっと並べられていて、年間1000円ちょいで会員登録するとそのサンプルを持ち帰れる仕組みになっているらしい。以下サイト引用です。

新商品や人気商品の情報がテレビCMやインターネットに溢れる時代ですが、実際の商品は「買い場」に足を運ばないと手に取ることはできません。それは、口コミで人気を博している商品であっても同じこと。
サンプル・ラボが「店舗型新広告媒体」と名乗る所以は、そのような新しい商品やお値打ちの試供品が一度に見られる、試せる、もらえる「ポータル・スペース」であることなのです。

サンプル・ラボでは商品販売を一切行わないため、生活者の立場に立てば、何のプレッシャーも感じずに、自分のライフスタイルに合った商品をチェックでき、試供品を持ち帰り、展示商品を試せるお気に入り発見基地となります。販売場所も明記しているので、気に入った商品を納得し安心して購入していただけるのです。
また、有料会員制により、新商品への感度が高い方の会員組織となりますので、会員様からブログなどの口コミを通じて、本当にいい商品、おすすめ商品を発信していただき、サンプル・ラボに商品を並べることもできないことではありません。(略)
「real promotion portal space」
サンプル・ラボは口コミを含む、リアルな流行発信スペースを目指します。

 東京は遠いし行く機会はあまりないので実際この店を利用できないのはとても残念だが、近くにあればぜひ利用したい店だと思った。
 ところでオビラジでは他にも無料サービスをいくつか紹介していた。深夜番組の割にやるな、オビラジ。

  • メディカフェ・・紙コップのコーヒーやドリンクがタダでもらえる代わりに、30秒ほどの広告が画面から流れるサービス。
  • プリア・・デジカメの写真がタダで現像できる代わりに写真の隅に広告が入るサービス。写真は捨てられにくい、長期間保存される、いろんな人に見られやすいという特徴をうまく利用していると思う。
  • 紹介はされなかったがタダコピも上記3つと同じようなサービスだろう。コピーがタダでできる代わりにコピー用紙の裏に広告が載っているというしくみである。

 こういった最近の風潮を見ていて、なんとなく思うことがある。このような「消費者にモノやサービスを無料で提供して、そこに広告をしのばせる事によって消費者にその企業を認知してもらい、サービス提供者は企業からの広告料を収入源にするやり方」というのはもともとインターネットに端を発してるのではないだろうか。googleのやり方そのまんまじゃないかと。ネットの世界で一応収入モデルとして確立したこの方法が、今、リアルの世界に逆流してきているんじゃないだろうか、と考えるのは憶測が過ぎるだろうか。
 勝手な推測だが、このような「無料で宣伝するビジネス」というのは、もともとビラから始まったんだと思う。街中でビラを配って消費者に認知してもらう。企業はビラを印刷して配るだけなのでコストは知れている。ただ、そのビラの内容に興味がない消費者にとってはビラは見向きもされないので認知ももちろんされにくい。そこでどうなったかというと、無料でポケットティッシュやらうちわやらを配って宣伝するやり方に変わってきた。これなら消費者にも一応利点があるので、もらってもらえる可能性は高くなるし、認知もされやすくなるだろう。ただ、街中で不特定多数に配るというやり方そのものには大きなブレークスルーがない。企業が送り手となって、セールスプロモーション会社を通して消費者に情報を受け渡す。消費者が受け取る情報はもっぱらPULL型なわけである。そこには多かれ少なかれ情報の伝達効率の悪さが存在するもので、子供が消費者金融ティッシュをもらっても子供にとってはティッシュという機能以外は何の意味もなさない、ということがしばしばある。
 それが上記4例のようなやり方の登場によってどう変化したか。
 結論から言うと消費者の情報のやり取りの仕方がPULL型からPUSH型にシフトしてきているということである。多少暴論だがビラやうちわがバナー広告ならば、タダコピやメディカフェは検索連動型の広告に近いのではないだろうか。「行動」連動型広告とでも言おうか。いわば今まで広告を載せる媒体が、消費者にとっては「自分の必要ないもの、あれば便利だがあっても無くてもいいもの」だったものが、「自分の必要なもの」にシフトしてきているのである。
 この変化はそれぞれに恩恵をもたらしていて、企業にしてみれば消費者一人ひとりが実生活に基づいた行動(「コピーしなくちゃ」、「コーヒー飲みたいな」、など)を起こした時に、その消費者が求めている情報を”ティッシュに比べれば”ピンポイントで宣伝することが可能になったし、消費者は自分の必要なもの(コピー、コーヒー、など)がタダで手に入る。*2サービス提供者はこのようないいサービスを提供しているので企業からの広告の依頼も増えて利益が出る。近江商人の言葉を借りて言うとまさに「三方よし」である。*3
 数年前ウェブで起こったことがそっくりそのままリアルで起こっているように見えないかい。と言ってもただのセールスプロモーション2.0という状況に過ぎないわけだけれども。

*1:誰がうまいこと言えと

*2:サンプル・ラボはこれをさらにピンポイントで行おうとしていると思う。消費者に自分の欲しい!と思う商品を持って帰ってもらってレビューを企業に送り、企業のマーケティングデータとして活用される。ようは、単純に消費者と企業それぞれの恩恵が底上げされているといった感じだろうか。リアル価格コム?「いい物を無料で提供するから、ちゃんと感想聞かせてね」みたいな。

*3:本来の「三方よし」は売り手よし、買い手よし、世間よしなので若干意味が違うけれど、あえて