当て逃げ事件から見るネットイナゴと正義と偽善
ついに当て逃げ事件の話題が朝日ドットコムでも取り上げられましたね。
「当て逃げ動画」ネット公開で波紋 車所有者は会社クビ
大体の人がこの事件に関しては「警察の対応の悪さ」や「加害者が悪い」という意見を持っています。それはもちろんそうです。僕もそう思います。動画という決定的な証拠がありながら不誠実な対応をした警察、また当て逃げをした加害者に車を貸した持ち主(ということになっているがどうなんだろうね)も糾弾されて当然だと思います。思いますけど。
id:siomarukoさんのブクマコメントがなんとなく僕の気持ちを代弁してくれているような気がしたので転載します。
ネット地裁っていうか、リンチ2.0っていうか。本当に車を貸してたんだとしたら、かわいそうな話。裁判員制度はやっぱりやめたほうがいいんじゃないかね。と思った。
あとid:youaraiさんのも。
安易な市民捜査はリンチに等しい。冤罪にならないか。
あとid:buyobuyoさんのも。
最初っからまともに取り上げてたらここまでには。/抑止力がないイナゴ跋扈の現状でこういう風潮が広まると危険かも / ↓犯罪者更正させないでどうするんだ?報復主義がお好みなら北朝鮮でも引っ越せ。
この3人さんのブクマコメントで大体僕の思ってることはほとんどいわれっちゃったんですけど、この3つのコメントに尽きると思います。*1繰り返しになりますが僕は加害者や警察の肩はけして持つつもりはありませんし糾弾されても仕方がないと思います。ただ、極論を承知で言うとネット世界に日の目を浴びたら最後、どこかぼろを出したら最後、別に日の目を浴びなければ、ぼろを出さなければ何やってもいいって言う今の風潮はある種の気持ち悪さを感じます。
車の持ち主がmixiで車のナンバーやら自分の名前やら勤務先やらを全体に公開してた。うわっこいつこんなところまで公開してるバッカじゃねーの。で、電凸されて祭られてネット上で裁かれる。果たしてそれが正義といえるのかって言う。
mixiでは、ヘマをして(というよりネットに無知で)飲酒運転したことを日記に書いたり、未成年で飲酒したことを日記に書いたりすると、結果どこの誰ともわからない人から「通報してやるからな!みてろよ!」みたいな書き込みがずらっとつくことがあります。そういう書き込みをする人っていちいち「飲酒運転」で日記検索してまわっているんだと思いますけど、まるでイナゴが群がるためのえさ探すみたいで、人のあらを探すみたいであまり気持ちよくはない。ていうより、暇だなぁと思う。
何度も言いますが僕は未成年の飲酒も飲酒運転も正しい行為とは思っていません。だからそういう間違った人の行為を正す行為は正義かもしれないけど、ネットイナゴは、間違いを正す行為自体に快感を覚えてしまっていると思います。そして、相手の、インターネットの匿名性やらプライバシーやらに対する無知につけこんでくる。それが見ず知らずの人間だからなおさらです。
他人の不幸は蜜の味、という言葉を体現してしまっていると思う。
そして他人の不幸は蜜の味、という言葉すら増幅させてしまう装置がインターネットでありweb2.0であると思います。リンチ2.0という言葉はドンピシャですね。
もしネットイナゴでも、たとえば自分自身が飲酒運転したとか、自分の息子とか身内が何か悪い事しでかしたとしても絶対かばうでしょ?殺人とかならともかく。未成年の飲酒くらい(くらいという言い方もどうかと思うけど)ならいちいち交番に連れてかないでしょ?わざわざ自分の息子に前科を付けに行く親は、よっぽど正義感にあふれる親じゃない限り、いないのじゃないでしょうか。進んで自首しにいくような犯罪者も、早々いません。そういった意味で、自分に関係ない人の行為は徹底的に貶す今のネットイナゴは偽善だと思わざるをえません。人のこといえんのかといいたくなる。僕は人のこと言えないです。にんげんだもの。そりゃ時には私利私欲のことも考えるよ。僕は人を裁けるほど崇高な人間じゃない。
まぁ、とはいえ、ネットイナゴには功罪あるとは思います。みんなの力で警察を動かせるなんて、webの登場なしにはありえない話ですからね。ネットイナゴがさまざまな事態をポジティブな結果に導くこともこれからどんどんありえてくる話だと思う。だからイナゴは悪だとは断定はしません。功罪両方ある、ということです。
しかし、これからはこういうケースもあるということを肝に銘じて生きていかなきゃだめかもしれないですね。見えざる目の存在を認識しなきゃいけない。別に何も悪いことしようなんてそもそも思ってませんが。
- 追記8月3日
やっぱり本人でしたね。書類送検もされたみたいです。
*1:まだまだブクマコメントはつきますし時折観察します